高桑進さん

建築板金加工業 有限会社スズバン
その道 40年のベテラン板金士高桑さんの仕事場は、一般住宅から神社仏閣に至るまで幅広い。この仕事の魅力と難しさは、平らな板から形ある物を作ること。細工を復元したり、自分でデザインしたオリジナルを作り出すこともあるとか。
 
「きっかけは、姉が板金士に嫁いだから。修業を始めた15才からの3年間が一番辛かった。仲間は次々と辞めてしまい、その時、支えになってくれたのが姉夫婦。仕事を覚えるまでは苦しいが、仕事を覚えた者は辞めない。何事も1人前になるには10年は掛かる。」と、当時を振り返る。
 
「今でも勉強」と言う高桑さんは、優れた職人がいると聞けば訪ねて行き、まず、道具を見せてもらう。腕の良い職人は、道具も自分の手に馴染む物を自分の手で作るという。
 
また、「建築現場では、他の職方に迷惑を掛けない様、他分野の知識も必要」と、趣味と勉強を兼ねて神輿のレプリカも制作している。「当然、現場監督なら、どんなことでも知っていなければならないが、経験の浅い監督の場合は、我々職方が助けている。工務店にとって、大事なことは年数の長さではなく、社長の器量…信用ですよ。 
お客さんとの絆、職方との絆、太豊さんにはそれがある。」と心強い言葉をいただいた。
 
最近は、建てる側も住む側も経験不足だと言う。「今は、住宅も、デザインがスッキリして見栄えの良い既製品が好まれる。施工も簡単だが、味がない。その点、手作りには、重みと深みがあり、飽きない。言わば芸術品である。京都で日本建築を見たら誰でも『良い』と感じるはず。若い人には、日本建築の似合う場所でその良さを感じる経験をしてほしい。」と熱く語る高桑さんは、手作りにこだわる匠の中の匠である。